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工房作りへの道③

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またずい分あいてしまいました。すみません!

ニーズがあるとも思えませんが、完結させないのも行儀が悪いので、
私の工房作りまでの道のりの続きを書きます。


苦節十数年(笑)の末に、60近くなってとうとう“物理的及び法的”には工房を作ることができた私(執念?)。
実際に、何を作ってどのような方法でどなたに買って頂こうとするのかという、
いっちばん大切な事は何も考えていませんでしたが、とりあえず職場の上司に「兼業許可申請書」を提出しました。
そうすれば、これまでのようにたまのお声かけで頼まれ物を作る事があった時、
堂々と店名をお伝えすることができる。それが少しずつでも繋がっていけばいいなと思っていました。



そうだ。店の屋号の事を書いていませんでした。ちょっと脱線させてください。

屋号はあれこれあれこれ考えました。何しろ考える時間はタップリありましたから。
少し若かったころは、オシャレな店名(漠然とし過ぎwww)を模索した時期もありました。
しかし店名にも流行があって、シンプル横文字系、扱っている商品や原材料そのまま系、
ていねいな暮らし女子のポリシー宣言系、昭和レトロ系、意味不明な仮名文字系…(この表現で伝わるかな~~!)など、
その時々で主流の傾向があるんですね。
それらは、最初はインパクトがあっても、時間が経つと色褪せて聞こえる気がしました。

ならば私らしい屋号を追求しようかなと考えてみましたが、
へそ曲がりな自虐人間ゆえ「枯葉」とか「落ち葉」とかが本気で候補にあがりました。
「縁起が悪い」という友人の声に、じゃあ横文字にすれば縁起の悪さをごまかせるか?とGoogleで翻訳してみると、
Fallen leavesとかautumn leavesとかDead leavesと出てきたけど、さすがにDeadはまずいでしょ(笑)となったり…。
ギリギリにならないと仕事ができない性格だからjust in timeとか…(英語は全く分からないのでGoogle翻訳まかせ)。

そのうち何だか分からなくなってきて、考えるのも面倒になり「もー猫の名前でいいや!」と…半ば投げやりになり、
屋号が決まったのでした。


(検索すれば分かりますが、職場との話し合いに決着がつくまでは文中に店名を書くことはやめておきます。
職場が私ごときの同行を注視するとは思えませんが、ここを見られる可能性もあるので…。)



話を戻しましょう。
そんなわけで今年の夏の始め頃、職場への兼業申請書に必要事項を記入して提出すると、
上司は「社長さんね、がんばって」と声をかけてくれました。
ところが数日後…その上司から「話がある」と呼ばれ、
「アツさんのような兼業内容は前例がないので厳しいかもしれない」」と言われました。
そして、2年前に全職員に回覧された「職員の営利企業等の従事制限に関する書類」とは別の、
新たな条件について細々と書かれた書類を差し出され、
「ここにもあるように、認められる自営業というのは、不動産・駐車場の賃貸業または太陽光の販売のみ。
それ以外の場合は、アツさんの副業が“職全体の不名誉とならないこと”を証明できる書類の提出が必要」と言われました。

はぁ!?

なんで!?

私は、職員規定を隅々まで読んで「これなら大丈夫」と判断したから工事しました。
なんで後出しで条件が増えるの?ていうかその書類なに?
以前回覧された書類の『兼業とは次に挙げるものをいう。』という項目の中には

自ら営利を目的とする私企業を営むこと。

と書いてあり、
そこには「不動産・駐車場の賃貸業云々」だとか「職全体の不名誉」だとかは一言も明記されていないのに!
そもそも不名誉の基準って何?
例えば、下品な商品を販売すると不名誉で、高級なものを販売するならOKとか(笑)?
ごめんなさい、くだらない事言って。
でも、その時の私の気持ちはそうでした。

そんな書類の事は聞いていないと反論してみましたが
「アツさんのようなケースは“前例”がないために、こちらも詳しく調べたところこのような文書に行き着いた」という屁理屈説明。

出た~~ ザ・前例


まぁ、上司は意地悪で言っているのではなく、総務に言われたことを伝えているだけなのは分かっていたので、そこで暴れたりすることはせず、後日「私なりの回答」をすることにして、一旦引き下がりました。

さてどうしましょう。

あの様子だと、私ごときが何か説明したところで事態は1ミリも動かないだろうことは分かる。
泣き落しや懇願でどうにかなる世界ではないことは、働いている者としてよく知っています。
そこに合理性があるかどうかは関係なく、前例主義、ルール主義な世界です。
私の開業が、主婦の趣味の延長的なものではなく(主婦の趣味の延長を否定しているわけではないです。)、
もうちょっと切羽詰まった事情があることや、ここまでくるのにどれだけ山坂越えてきたかなんてことは、
一切断じて考慮してもらえないことも知っています。
総務が「許可」という印を押してくれるとしたらそれは、
上司の説明通り「私の副業が“職全体の不名誉とならないこと”を証明できる書類」を提出した時しかないでしょう。

そんな(笑)
できるわけがないでしょう。
そもそも名誉・不名誉の意味も分からないのだから、何をもってすればそれを「証明」などできるのかがわかりません。
職場側は「ほぼ不可能」な条件を提示することで、「やみくもに否認したわけではない」というエビデンスを作った上で
絶対に認めないつもりなのでしょう。

さあどうしようかな~。

退職しない限り開業できそうもないけど、お菓子の仕事1本で生きていけるとは到底思えないし。
かといって、契約満期なり定年なりで今の職を退職してから店を始めるというのは、今でも充分過ぎるほど高齢な私にはあまりに非現実的なプラン。
しかし、きれいさっぱり開業のことを忘れて、今の職に打ち込むことができるか?と考えたら、その覚悟をする自信もない。
毎日、使われないまま朽ちていく工房を眺め、そして職場に対するある種の恨めしさを抱えながら働くというのは、精神衛生上非常に良くないことは想像つく。

…と、突きつけられた「ほぼ不可能」な条件に戦意喪失し、色々な思いを抱えて帰宅したその日の夜、
息子にその事を伝えると、息子が「自分が開業届を出せば、事業主がアツさんじゃなくなる。そうすれば文句はないだろう」と提案してくれました。
ありがとう息子。それが果たして“職全体の不名誉とならないこと”の証明になるかどうかはわからないけど、
このまま引き下がるのも悔しいから、とりあえず主張してみることにしました。

そして翌日、上司に「息子が開業届を出すことにしました。事業主は息子になるので、私はそこで働く従業員にすぎないことになります」と伝えました。
上司は一瞬「え…」という表情をしながらも「わかりました。総務にはそう伝えます」と言ってくれました。

しかし数日後。上司から「アツさんちょっと…」と声をかけられて告げられたことは
「やっぱりダメ」という言葉。

「もしもその店で食中毒などのトラブルが発生したら、お菓子の制作者であるアツさんが全く対応しないというわけにはいかないでしょう。狭いこの町で『食中毒の出たあの店は、実は〇〇〇の職員の店なんだって』という事になっては困る」
また「副業は、今の業務に差し支えないことが条件。例えば、勤務中にアツさんのお店の水道が破裂したり火事になったりしても、お店に駆けつけることは絶対に許されない。いくら事業主が息子さんの名前でも、アツさんが対応しなくてはならないはず。その観点からも認めることができない」
…と言われました。

そして「どちらか(勤務か店か)選んでください」と言われました。

チーン。

私は「考えます」と答えました。
それが約2ヶ月前のこと。

ん~~。人生厳しいですね。

正直言うと今の私は、勤務と菓子屋を両立させる自信なんて小さじ1杯もありません。
もし副業が認められても、当分は「不定期での数量限定販売」が精一杯だと思っています。
かと言って、仕事を辞める勇気もありません。
ええっ!?あんなに山坂越えてやーっと工房を作ったのにその程度の気持ちなの?と思われるかもしれませんが、
それこそ「主婦の趣味の延長」でお店を始めたいと思っていた頃とは状況が一変してしまったのです。

50代にして突然、ひとりで生きていく人生になりました。
結婚後の30年以上主婦とパート勤めしかしてこず、青天の霹靂で熟年離婚をしたばかり。
この年で生まれて初めて世帯主となり、社会的責任の全てを「自分ひとり」で担ぐことになりました。
不謹慎な発言ですが、突然の離別と死別とでは、その後の人生が天と地ほど違います。
それまで抱いていた自分の老後のイメージは木っ端微塵に砕け散り、“路頭に迷う貧困孤独老婆”となるかもしれないという現実に直面しました。
これは恐怖でしかありません。
貯金も年金もない自分がこれからどうやって生きていくのか。収入が途絶えたら息子に迷惑がかかってしまう。
父親のことでこれまで散々苦しめてしまった彼らに、母親までもが負の存在になるなんて絶対に避けたい。

世の中に、シングルで颯爽と生きている女性はいくらでもいて、
何を大げさな…と思われるかもしれないけれど、50代後半でのシングル初心者&夫トラブルの後始末祭りで
解放を喜ぶよりも不安の方が大きかったのです。

…販売に対する具体的なことは白紙のまま勢いで工房作りをしたのも、そんな恐怖でジタバタと慌て「何でもいいから何かしなくては!」という焦りがあったからです。(常にジタバタしていてお恥ずかしいです)

今の仕事も正社員ではなく3年任期の仕事。今年で3年目なので、任期延長してもらうためには試験を受けなければならないし上層部の「ご意見」も反映される。
グダグダ書いてしまいましたが、だから今の私にとって開業するという事は「定年のない職場の確保」「無職になった時のため」という意味合いが大きいのです。

でもね、職場にはそんな事情は関係ないし、そもそも私は雇ってすぐに倒れて休暇を取った迷惑職員。
「あの人また何か言い出したよ」という存在ではないかと思います。
とにかく、「どちらか(勤務か店か)選んでください」という言葉の意味は、
ズバリ「開業したけりゃ辞めてね」ということ。

わかりました。開業したいので辞めまーす」と言えたらどんなにスカッとするだろうと思ったな~~!

あれから2ヶ月が経ちましたが、私が「考えます」と答えたのを最後に、それ以降上司はひとっこともその話には触れてきません。
上司は、私が1年半前に命辛々離婚したことも、安くないお金を使って自宅を工事してしまったことも、
開業を諦めたらその工房が丸ごと「無駄」になることも全て知っているけど、
一切何も、「どうなった?」という言葉すら言ってきません。見事です。

私自身も、夏は仕事が非常に忙しかったこともあり、少しその事から気持ちが離れていました。
しかしいくら「たまの販売が精一杯」の開業計画だったとしても、使われないままの工房を放置しておくのはあまりにもあまりにも悔しく、最後の賭けに出る事にしました。


あ、あれ…?
今回で最終回のはずが、あと1話になってしまいました
ごめんなさい。次回こそ最終回にしますので、もう少しお付き合いくださいませ。
次回は決着がついているはずです。(悪い予感しかしませんけれど)


工房話が終わったら、
我が家のトラブルのことについて少し具体的に書いていこうかなと思っています。
トラブル真っ最中の頃は、恥ずかしさと惨めさで「こんな事誰にも言えない。言えるわけがない」と思っていました。
内容が内容でしたから。
こんな風にブログで全世界(笑)に発信しちゃいましたが、実生活で事の詳細を伝えた相手はひとりかふたりくらいです。

人は「途方もない困難(その人にとって)」に直面した時、公的・私的それぞれの支えがなければ倒れてしまうと思います。
しかし、その困難が「打ち明けることがためらわれる内容」だった時、人は強烈な孤独感に襲われ、
その孤独感は人を追い詰め力を奪います。
追い詰められるというのは怖いことです。対面している敵(困難)が実際の何倍にも大きく感じられ、疲れ果て、「もうムリだ、もうダメだ」という思考に支配されてしまいます。
私に書けるのは私の体験に過ぎませんが、もしかしたらどなたかの目に留まり
「あ、私だけじゃないんだ」と小さなガス抜きができるかもしれない。
そう思うのです。


長々と失礼いたしました。
次回は「悲報」か「朗報」のどちらかをお伝えします。 (^_^;)


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