母のおつかい

二世帯同居をしている80過ぎの母は、年齢相当の故障はあちこちに出ているものの、
身の回りのことは全て自分でできる。
ただ、我が家は本当に不便な場所にあるので、買い物はほとんど私が引き受けている。
この注文が、意外に難易度の高いものが多い。
『あっさりした和菓子、寒天系以外』
『楽そうな、でもチクチクしない靴下』
『ちょっとしたお客様の時用の気のきいたお菓子』
↑これは初級。
『2年前くらいに買ってきてくれたワイン』
『普段のゴミ出しの時にチョコッとかぶる帽子』
『感じのいい、小ぶりの醤油差し』
などなど…
本人にしか分からない、主観的嗜好が条件になっている物も多く
う~~ん!!!これはっ……と唸ることもしばしば。
母は物腰穏やかでいつも私を気遣ってくれる人なのだが、希望にそわない買い物にはズバッとダメだしをする。
だから、何かを頼まれると詳しい聞き取り調査をしなければならない。
「これ、いつ使うものなの?」
「昔あったアレに比べると大きい方がいいの?小さい方がいいの?」
「色は無地?柄?柄の場合はどんな感じ?」等々…
私の口調がキツイこともあり、あれではまるで「詰問」に見えるだろう。
でも、この調査が大切なのである。
「どんな柄でもいいわよ」とか「どちらでもいいわ」とかの言葉を信じて
適当に選んだ物は、大抵お蔵入りになっているんだから。
私もできるだけ母の望む物を調達したいと思うし、今はネットという強い味方もある。
希望通りの物が届いて喜ぶ母を見ると、ホッと安心する。
しかし、衣類など趣味性の強い物となると、やはりまだまだ難関である。
さて
そんな母の先日の買い物リストに『カップケーキ』とあった。
いつものように「カップケーキ?」「どんなタイプ?」と聞き返すと
「スーパーのパン売り場の横に置いてあるような、駄菓子でいいのよ」との答え。
今まで、母がカップケーキを好んでいる様子を見たことがないが、急に食べたくなることもあろう。
次の買い物の時に買うね、と返事をした。
そして翌日。
いつも行くスーパーのパン売り場の横に、確かにカップケーキはあった。
かなり小ぶりなカップケーキがたくさん、ビニール袋に入って売られていた。
「おお、あったあった」と、一袋カゴに入れようとした時、一緒にいた長男が
「そんなの、作ればいいじゃん!」と言った。
あ、そうか。
私、いつもこんなもの作ってるよね。
ママ(母の事)の頼まれだからと、オーダーに忠実になってたけど、
考えたらこういうシンプルなものこそ、家で作った方が美味しいと思っている私。
「そうだねー」と答えて、そのビニール袋を売り場に戻した。
そして焼いたのがこの、何のヘンテツもないカップケーキである。

何のヘンテツもなく、バターと卵の香りだけ。
母は「こんなに沢山!」と笑って受け取り、
翌日、半分は冷凍にした、美味しかったと言っていた。

かわってこちらは次男のリクエスト。苺のヨーグルトムース
ムースと言ってもメレンゲは入れておらず、とても簡単なデザート。
毎年「作って、作って」と言われるものだが、作るワクワク感に欠ける(笑)。
で、ついつい苺を買っても焼きタルトだのドライ苺のパウンドケーキだのしてしまう。
が、今年はすぐに作りましたよ~。
次男は、何度も冷蔵庫を開けて、固まるのはいつ?としつこく聞き、
デコレーションするのも待たずに大喜びで食べていた。
何故か最近、凝ったものを作らないと!と意味もなく焦っていた私に
“喜ばれるものを作る幸せ”を思い出させてくれたのは、こんなシンプルな菓子たちだった。
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